「中央口で待ってるから」と 改札口を指定してくる娘のメールに

「ハイ ハイ」と 小さくつぶやかきながら出た改札口は 北口 

急ぎ足で 人ごみをかき分けて グルっと 回って 

「久しぶり」と 

中央改札口の前で ジッと前を見据える娘の背中に 声を掛ける 

 

「また 間違えたの?」と 首をかしげる娘

「中央改札口がなかった」と 応える私

 

私の荷物に手を差し伸べた 娘は 「重ッ!!」肩を傾ける

「ほら キャスターが付いたスーツケース持ってたよね?」と娘

「うん あれね キャスターが壊れた」と私

本当に 長く重宝していた 小さなスーツケースが壊れてしまった

そのうちにと思いながら 先延ばしにしている

 

まあ 数日分だから ボストンバッグで十分 とは言え

着替えと 洗面道具 だけど 何故か いつも重くなる と

自分でも不思議に思う

 

娘に その重い荷物を 持たせながら

「お母さんはね 酒屋の娘だったから 木枠に入った お酒を10本は

ひょいと抱えたからね 並みの腕じゃないわけ・・」と 

一気に軽くなって自由になった腕を秘かに 嬉しく感じながら

強気な母をみせておく

 

博多の街は 人も物も 輝いて 活気に満ちている

田舎にはない 自由さと 華やかさがあり 私は好きだ

昼食をとって 買い物をする

 

 

仕事を兼ねた 用事を済ませ

帰りは ひとりで 電車に・・・

やはり 片腕にかかるボストンバッグの重さは堪える

それに 普段は 車社会の田舎暮らし 

街中の生活は 歩きが多い

自然 つねに 座れる椅子を探している自分がいる

 

電車にのると 「優先席」が空いていた

「もしかして もう わたし いいかな~」と ためらいながらも

空席に身を置いてみる

やれやれ 座れた

しかし しばらくすると

なんとなく 落ち着かなくて 座り心地が悪くなってくる

 

次の駅で乗車してきたご婦人が 荷物を重そうに持っていらして

「宜しかったら こちら 空いてますので どうぞ」と

腰を少しずらして 席を少しあけてみる

「いえ 大丈夫です」と 言われる

そうか そうよね 座るところに荷物はね

失礼でした

 

停車駅について 扉が開くたびに

あの方は 私より年上かしら? いや 私の方が上よね

座っていて大丈夫かな?

そのうち 妊娠中のお腹の大きなご婦人が立たれたので

そっと 譲ることにした

 

やはり 私には向かないのだと分かる

だれが具合が悪いのか 妊娠中なのか ご高齢なのか

見た目で判断が出来ない限り 座るべきではなかった

その人たちのための席なのだ

 

次は 普通の席にしよう と決め

立ったものの 相変わらず

腕にかかったバッグは 重い

 

やっと 駅について 喫茶店に立ち寄って

荷物を置いて ホッと ひと息

 

通路を歩く 老若男女 ゴロゴロと スーツケースを引いている

買って帰ろうか いやいや 今は かえって 荷物になる 

 

 

電車の出発まで 時間があって

数年ぶりに 映画館に入った

吉永小百合さんと 大泉 洋さんの

「こんにちは、母さん」

映画館は 題目も影響するのか

なんとなく 白髪の高齢の方が 目立っていた

吉永さんが演じる お母さん役は 

息子さんや お孫さんと 適度な距離を置きながら

やさしく見守っていく 役柄だった

ボランティア活動や 恋も絡ませた 映画だったけど

80歳前とは思えない 吉永さんの 

上品で 機敏で 美しい 立ち居振る舞いは 

見事なものでした

 

そして・・・

 

幕が下りて さあ 帰ろうか・・と 立ち上がった瞬間

グキッ!! 腰が・・・

 

やっとの思いで 電車にたどりつき

すぐに 携帯で

「お父さん 駅に迎えに来てくれる?

そのまま 整骨医院の先生のところに 連れてって・・・」

 

酒屋の娘の腕なんて

むかし、むかしとった きねずか だった

帰ったら キャスター付きのスーツケース購入しよう!!

 

 

佳秀窯HP ↓

 https://www.nishiyama-tadashi.c