おとなりN県にお住いの T様がお見えになったのは
2年ぶりのことです
例年 春の陶器市には いつも お母様とお揃いで
お出かけくださっていました
最後に お二人でお見えになったのは
一昨年の春のことです
その時 お母様は
刺しゅう入りの黒いセーターの上に
淡いピンク色のカーディガンを羽織って
穏やかな微笑みで 椅子に座っていらっしゃいました
その時の佇まいが なぜか ずっと 脳裏に残っていて
昨年 訃報のお便りをいただいて
ぽっかり 穴が開いたような さみしさを感じましたけど
やさしい 語り口や
面影は ずっと 心に残っているのです
先日 T様が 展示室にお入りになった折に
「ひとりで こちらに出かけるのが なんだか
寂しくて・・」と 妹様をお連れになってのご来店でした
薄っすら 涙ぐんでいらっしゃいました
言葉になりませんでしたけど 私も 同じでした
いつも どこへでも お出かけになる時は
ご一緒のお二人でしたので
寂しさは はかり知れません
「この時期だけ作られる桃のカステラなんです
食べてくださいね」と お土産を頂きました
しばらく お母様のお話など 懐かしみながら
時を過ごしました
「こちらに 用事がなくても 遊びに来てくださいね」と 私
「ありがとうございます また来ますね」と 手を振って 帰られました
お見送りをしながら
ふと 私は 母とどこかへ 二人で 出かけたという
思い出があるだろうか・・・
記憶をたどっても思い出せません
おそらく 一度もなかったように思います
実家が商家だったので 母は いつも働いていましたし
私も 結婚後 働きづくめでした
そんな ゆったりした 時間が 母にも 私にも
なかったのです
いつか 二人の兄たちも
「おふくろとの思い出って 案外少ないな~」と
話していたのを同じ思いで聞いていました
父と母は とっても仲良しで いつも 二人一緒だったので
私たちとの 個別の時間が あまりなったこともあるのかな~
母は そんな 私たちのことを どう思っていたのだろうか
今となっては 聞けませんが・・・
ただ そんな 母が
なぜか 私たちに
強烈な 記憶を残して逝きました
母は 「平成22年 2月 22日」 に 昇天したのです
強烈なかかわり 印象を残した 父の命日は 案外忘れるのですが
母の命日だけは 誰も 忘れないのです
昨日 遠く離れて住む 娘から
「今日 おばあちゃんの命日だったよね お墓参り行った?」と
メールが届き
仏壇の前には 長女が 「命日だったから」と
よもぎ餅を 買って 供えてくれていました
生きているときは なんだか ふんわりした思い出しかないのに
しっかり 足跡を残して 行ったのです
佳秀窯HP ↓
https://www.nishiyama-tadashi.com