娘が いつの間にか 転職を決め
荷をまとめ 遠くに 引っ越していくと言う
自分がやりたかった 希望する 仕事を見つけ
サッサと マンションを契約し 住民票を移して行きました
電車で行けば いつでも会える距離だったのに
そんなに 遠くに 行かなくても・・・
近くに いくらでも あるじゃない・・・
慣れた仕事で よかったじゃない・・・
そうねと 理解した顔をしているけど 心中は 複雑でした
そんな 私の気持ちを見透かしているのか
「しばらく会えないから お母さん 旅行でも行く?」と 誘ってくれました
京都 と 神戸への 2泊3日の旅
キラキラと 美しい夜景を 観覧車から眺めます
小さいころ こうやって 動く観覧車の窓から 眼下の景色を はしゃいで見ていたっけ・・
寺院や 仏像 を 見て回る 母娘の旅は アッと いう間に終わり
京都の駅で それぞれ 違う方向の新幹線に乗らなければなりません
旅の最終日 「じゃあね!体に気を付けて」と 言い残し
エスカレーターに乗って ホームへ向かう 私を 娘は下で 見送っています
一度振り返って 手を振り
もう一度 振り返って 手を振る
最後は 振り返れませんでした
旅立つ娘に 涙でゆがんだ顔は 見せたくなかったから
席について 反対側の ホームを見つめると
東に向かう新幹線を待つ 娘の姿が 見えます
不覚にも 涙があふれて 止まらなくて・・
ふと 気づいたら
隣の席には かわいい 乳児を抱っこした 若いお母さんが座っていました
気づかれないように そっと 涙をぬぐって
お隣りに ご挨拶をする
若いお母さんは 礼儀正しく
「すみません 子供連れでご迷惑をおかけするかもわかりません」と 言われました
「気にしないで 私も 娘二人育てたんですよ」
生後3か月といわれる 可愛い男の子は ぐっすり お母さんの胸で 眠っています
「小さいお子さん連れだと大変ですね」と 話しかけると
「数日前から実家に帰ろうかな~と 思っていて こんな小さな子供連れでは
無理だろうな~と あきらめていたんですけど
今朝になって やっぱり 行こう!! と 急に決めて それからが
忙しくて・・・」
関東のある地方都市に ご主人と3人で住んでいるといわれる
「洗濯機がとまるのを待って 急いで 洗濯物を干して
夕飯にと炊いていた 炊飯器のご飯を ラップに詰めて 冷凍室に
自分とお子さんの衣類を スーツケースに 詰め込んで
タクシーで駅まで行って お金を出して チケット買って・・・」
話を聞いていて 私は 口がポカンと開いたような顔をしていたと思います
足元には スーツケースと リックと 手提げ袋
そして 胸には 抱っこひもに包まれた かわいい坊や
朝ごはん食べていたら 急に思い立ったと言われる
「ご主人は 大丈夫?」
「ハイ 今夜は飲み会で遅いらしいので・・
けれど連絡したら
ほんとに 行くんだ~と ビックリしてました」と
「福岡の両親にも 今朝 これから帰る と連絡すると
ええ~ッ 本当に 帰るの?」と 急遽 ご両親は 仕事を切り上げて
駅に迎えに来てもらうらしい
「私 実家に帰るなんて 無理だと思っていたんです
でも やってみよう!! と 決めたんです」
産後を実家で過ごした後 家事や育児に追われる日々だったに違いない
少し 違う冒険をしてみたい と 思う気持ちは すごくよくわかる
けれど いつか子供が大きくなったら・・・
今は 我慢・・ そう思って 自分を納得させ あきらめてきたのが
ほとんどの母親たちではなかっただろうか
もやもや 考えているより 動こう
やりたいことを やろう と 決めて
見事に実行に移している
優しそうに 坊やを見つめる彼女の横顔を見る
「あなた 自信がついたのじゃないの?」と 私
彼女は うなずいて
「子供が少し大きくなったら 仕事に戻りたいんです」と
強い意志が感じられる言葉だった
私の子育てのころは 時間に追われ どうやって 過ごしていたのか
記憶にないくらいだけれど
このお母さんの行動力には ビックリしたけれど
しっかり 前を向いて 歩いている
「すごいね!」と 言うと
にっこり笑顔を返してくれました
少しでも 安心できる環境で 安泰な道を歩いて行ってほしい
できたら いばらの道を避けて・・・
そんな人生があるわけないのに・・
未知の世界に飛び込んで行く 娘を案じて 心配していた私
このお母さんも そして わが娘も
これから いろんなことが あるだろうけど
勇気をもって 前に 前に 進んでいる
いろんなことに
ぶつかりながら 成長していくのだろう
もう 私も 悩んだり 心配したり 泣くのは やめよう
彼女や 娘や 頑張っている女性たちを
そっと 後ろから 応援してあげられる母親になろう
ふたたび 「頑張ってね!」と いう言葉を 彼女に送って
福岡駅で別れました
佳秀窯HP ↓
https://www.nishiyama-tadashi.com