良く晴れた 秋の日に

叔母は かねがね 周りのみんなに 言っていた

「米寿を祝う同窓会には きっと 出席するからね」 という宣言通りに 

生まれ育った この町に帰ってきました

 

 

いつもなら 電車を乗り継いで お土産を両手に

帰ってくる叔母でしたが・・

今回は 娘さんの運転する車に乗せてもらって 

2時間半を掛けてやってきました

 

叔母は 自分の経営する美容室で 現役の美容師として 働いていました

「私にしてもらいたいって 長年のお得意様が来てくれるのよ」と言っていたのです

ところが 夏のある日

部屋で転んで 背中を圧迫骨折して入院してしまいました

周りからもすすめられ ついに 自分でも 店を閉めることを決心したようです

 

我が家では 「同窓会は無理かもね 楽しみにしていたのにね 」と 話していたのですが

叔母は 「米寿を祝う同窓会は 最後になるから 絶対出席したい」と

リハビリを必死で頑張ったようです

 

 

「仲良しの幼馴染みと一緒に 米寿を共に祝いたい」という強い思いがあったようです

叔母は 15歳の時から 住み込みで美容室に入り 

技術を身に付けたと言っている

「ずいぶん苦労したけれどね 美容師をやってて良かったよ」と

 

「叔母さん 次は 卒寿のお祝いね」と言って

帰り際 そっと 背中に手をあてると

ふんわりとした上着からは気づかなかったけど

丸まった背中は ごつごつとしていました

 

13年前に亡くなった義母と同じ背中でした

 

二人の子供を育て 70年以上にわたって 

お客様の髪を結ってきた 背中だったのです

 

 

「卒寿ね 元気なら また来るよ」と

車が見えなくなるまで 笑顔で 手を振って

帰って行きました

 

佳秀窯HP ↓

 https://www.nishiyama-tadashi.c