その日も 朝食を終え いつものように

すでに 仕事を始めている夫の後から

私も 仕事を始めようとしているところでした

ミャン ミャン ミャン・・・

窓の外から か細いネコの鳴き声が聞こえてきます

「どこかで ネコが生まれたのかな~?」と 私

「うん 昨夜からずっと 道の向こうから聞こえてきている」と 夫

 

ふ~ん ???

「ねぇ 近くで聞こえない?」と 私

「あ~そう言えば 昨日より近いなぁ」と 夫

 

急ピッチの工房 手を休めずに 水拭き

と 言いたいところだけど

先程から ミャン ミャン が ひっきりなしに

聞こえてきます

「う~~~ん 気になる 外に行ってみてくるね」と言い置いて 外へ

 

工房の傍らに置きっぱなしにしている 鉢植えの隙間から

小さくて おびえたような瞳で こちらをジッと見てる子猫がいます

「ここにいた!」

幼いころ 実家で犬を飼っていたことがありますが

自分で育てたことがなく どうしたらいいのか・・

とりあえず トレーに牛乳を入れて 置いてみました

 

ときどき 見に行ってみますが 牛乳は減っていません

「嫌いなのかな?」

 

どうしたらいいのか とにかく 仕事 仕事・・・

やっと 水拭きの仕事を始めると 

「お~い カラスが来ているよ!」と 夫

「牛乳狙ってる?」と 私

「いや おそらくネコが狙われてる」と 夫

子猫と言えども 重力があるのに

カラスが口にくわえて運んで行く???

 

野良猫は よくカラスに狙われるらしい

 

再び 大急ぎで 外へ・・

 

お隣のフェンスの上に 大きなカラスがとまっていて

ネコを狙っているようです

そのすぐそばの紅葉の木の根っこのところから

子猫の怯える鳴き声が 聞こえてきます

 

かがんで 目を凝らしてみたら

草むらの奥に ふわふわの毛がみえます

思わず わたしが勝手に名付けた ミィちゃん 「ミィちゃん 出ておいで」と

声を掛けてみるものの 正直どうしていいのか分かりません

けれど このままだと また カラスに狙われてしまいます

「そうだ お隣に住む ネコ 犬 大好き 義姉の力を借りよう」

携帯で 事情を話すと 義姉は すぐに 駆けつけてくれました

 

「あ~~あ どうしたね かわいそうに

もう大丈夫よ おいで 出ておいで」 何とも子供に話しかけるように

愛情いっぱいの声かけです

義姉が そっ~と 手を延ばして 捕まえようとすると

ニャ~~ン と 体をそらせて すばやく逃げ去りました

ネコに慣れている義姉でも 手に負えないようです

仕方がありません

どこかに逃げて行ったのでしょう

どこかへ落ち着くことでしょう

やれやれ 一件落着!!

と 工房へ戻って 仕事を始めたところ 

 

再び ニャ~~ン ニャ~~ン が始まりました

甘えたような声に変わっています

このままだと仕事になりません

カラスの事も気にかかり ネットで調べた動物保護の支援団体に連絡してみました

 

「今 犬も猫もいっぱいで許容数を越えている状態です」と

それでも 「ちょっと ボランティアで育ててる方がいらっしゃいますから

連絡を取ってみます」と言われました

 

夕方 明るくて素敵な女性が 捕獲機を持ってきてくださって

中に 餌を置いて行ってくれました

「捕獲したら 動物病院につれて行って駆虫をしてあげてください

わたしが引き取ったにしても 他の猫に虫が移ると大変なので・・」と

「駆虫をしてくると飼って頂けるのでしょうか?」と たずねると

もうすでにご自宅に7匹の保護猫を飼ていらっしゃるそうです

「どうかな~」と 気の毒そうな表情をされています

 

お若い方だったので おそらくお子さんもまだ小さいかもしれないし・・・

無理は言えないのだと思いました

「いっそ こちらで飼いませんか 可愛いですよ」と

 

どうにもならなければ そうするしかないかな~と 心は動いていましたが

一時的な気持ちで 飼う事は出来ない 年齢を考えても無理だと決断しました

 

次の日の早朝 夫が 「かごの中に ネコが入っているよ」と言います

 

エサは 食べているようです

気になって義姉が 餌を持ってきてくれて

落ち着くだろうからと 

かごを覆う布も運んでくれました

これで 先ずは カラスから守ってやれそうです

 

相変わらず ミャン ミャン 鳴き声は続いていますが

こちらも少し 落ち着きました

 

「昼間 外は 暑すぎて 耐えられんだろう」と

夫が言うので

虫が飛び散るといけないので 段ボールで囲んで

家の中に入れました

 

あ~~あ だんだん 情がうつって

「うちで飼おうかな~」と思ってしまいます

午後 愛護団体の方から連絡が入り

明日 隣の市にある 動物病院に連れてきてください との

連絡が入りました

保護してくださるところが見つかるようです

 

「ミィちゃん 明日 病院に行くよ

良い人だったらいいね」と 声かけると

私をみて 「ミャン」と こたえました

 

次の日 義姉も付いてくると言ってくれて

ふたりで ミィちゃんを車に乗せて 隣の市へ

 

動物病院では スタッフの方が待っていてくださって

きれいに洗って 駆虫してもらいました

 

 

最初は 嫌がっていましたが スタッフさんにやさしく抱っこしてもらって

落ち着いたようです

 

「生後1か月半くらい経っていて 病気もしていません

美人さんだから すぐに 飼手が見つかるでしょう」と

言われました

「ミィちゃん 元気でね 良い人に巡り合いますように」

病院に代金をお支払いして 後をお願いして帰りました

 

帰り際 一緒に来てくれた 義姉が

「これは エサ代にしてください」と 添えていました

 

お願いしたはずなのに 決めたはずなのに

ミィちゃんの鳴き声が耳にこびりついて

ミィちゃんの見上げる可愛い瞳が いつまでも 目に焼き付いていて

どうしているのか 気になって仕方がありません

 

次に日の朝 義姉が 「いる~?」と 我が家にやってきて

「あのね あのね 半年 いや 数か月たっても 貰い手がなかったら

うちで飼おうかね~」と 目を輝かせて言います

絶対にダメと家族に止められていると言っていたのに・・

「義姉さん・・・・」

ほんの数日で ミィちゃんのとりこになってしまった おばちゃんたちでした

 

佳秀窯HP ↓

 https://www.nishiyama-tadashi.co